遺産の名義変更

遺産の名義変更手続きに必要な書類や処理にかかる時間等は、手続先ごとに異なります。

また、遺産の名義変更手続きは、平日しか行うことができませんので、短期間に集中的に済ませることがポイントです。

この手続きには、添付書類としてほぼ共通して必要な書類がありますので、次の5点を数通準備しておくとスムーズに進めることができます。

名義変更5点セット

1.当事者全員の印鑑証明書付遺産分割協議書、遺言書等

2.被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)

3.相続人全員の戸籍謄本

4.相続人全員の住民票

5.その他被相続人と相続人との関係を明らかにする戸籍謄本

平成29年5月29日(月)から、全国の登記所(法務局)において、不動産や預貯金などの相続手続きに利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。

今までの相続手続きでは、被相続人の戸除籍謄本等(2・3・4・5)を、相続手続を取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要がありました。

法定相続情報証明制度は、登記所(法務局)に戸除籍謄本等を提出し、併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出することにより、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してくれます。

その後の相続手続きは、「法定相続情報一覧図の写し」を利用することにより、戸除籍謄本等が必要なくなります。

詳しくは法務省HP
法定相続情報証明制度の具体的な手続について

主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

名義変更手続きの必要書類

預貯金

銀行・郵便局などに預貯金のある人が死亡したことを銀行などが知ると、(※)預金口座は凍結されてしまいます。凍結された口座は、預金の払い戻しや引き落としができなくなるため、公共料金等の支払いができず、遅延損害金が発生しますので、預貯金の相続手続きを後回しにするのはお勧めできません。

銀行は原則として口座のある支店での手続きが必要ですが、書類を提出して内容に問題がなければ、1週間から10日程度で指定の口座に振り込まれます。

ゆうちょ銀行の場合は、最寄りの郵便局やゆうちょ銀行に「相続確認表」を提出し、1~2週間で相続手続きに必要な書類の案内書が郵送され、その必要書類を提出してから、1~2週間で「相続払戻金」が代表相続人あて入金されます。
相続Web案内サービスもあります。こちら

預金解約・払戻し請求時の必要書類

銀行預金の相続手続きには、各銀行によって若干異なるものの、概ね以下の書類が必要になります。

①当事者全員の印鑑証明書付遺産分割協議書、遺言書等
②「法定相続情報一覧図の写し」
③払戻し請求書・名義書換依頼書や相続届
④振込用紙
⑤被相続人の通帳、預貯金証書、キャッシュカード
⑥通帳やカード紛失の場合紛失届
⑦委任状(代表相続人がある場合)

※遺産の分割前における預貯金債権の行使(改正民法第909条の2)

預貯金債権については、これまでの判例では、当然分割の原則によって法定相続分に応じて各相続人に帰属し、遺産分割の対象にはならないとされてきましたが、平成28年12月28日の最高裁大法廷決定(民集70・8・2121)において、預貯金債権が遺産分割の対象に含まれると判断されたため、遺産分割までの間は、共同相続人全員が共同して行使しなければならず、配偶者等の一部の相続人が当面の生活費や葬儀費用に充てるため、一部払い戻すことができないという不都合が生じるおそれがあることとなりました。平成28年12月19日  最高裁判所大法廷 詳しくは裁判所HP

そこで改正民法は、遺産に属する預貯金債権について、当面の生活費など相続開始後の資金需要に対して、簡易迅速な払い戻しを可能とするために、家庭裁判所の許可なく金融機関の窓口において、一定の上限を設けた上で、払い戻しを受けることを認める制度を創設しました。【施行日:2019.7.1】詳しくはこちら

株式

株式の名義変更手続きも基本的には預貯金とほぼ同様の内容となりますが、被相続人が証券口座を開設している証券会社に死亡の事実を伝えると、被相続人が所有していた株券の一覧と相続手続きの依頼書を発行してもらえます。

株式の名義変更請求時の必要書類

相続に必要な書類は各証券会社によって若干異なるものの、概ね以下の書類を準備して、受取証券口座を指定します。
手続きにかかる日数は2週間程度です。
なお、相続人が証券口座を所有していない場合は、併せて証券口座を開設する手続きが必要です。

①当事者全員の印鑑証明書付遺産分割協議書、遺言書等
②「法定相続情報一覧図の写し」
③相続手続依頼書
④上場株式の場合、以下のうち該当する書類
 ・特別口座開設請求書(失念救済請求書※死亡日が平成21年1月4日以前の場合)
 ・口座振替申請書(※死亡日が平成21年1月5日以降の場合)
⑤未上場株式の場合、株式名義書換請求書(兼株主票)
⑥株券(手元に株券がある場合)

不動産

被相続人の不動産を相続するためには、相続を原因とする所有権移転登記の手続きを、その不動産の所在地を管轄する法務局に対して行うことになります(郵送可)

この手続きは、いつまでにしなければならないという期限はありませんが、権利関係を明確にする上でも、できるだけ早めに手続きすることをお勧めします。
手続きを行わずに長期間故人名義のままにしておくと、相続人が死亡してしまい、相続関係が非常に複雑になってしまうこともあります。期間が長くなるほど相続人が増えてしまい、手続きもより煩雑になってしまいます。

「所有権移転登記」申請の必要書類

①当事者全員の印鑑証明書付遺産分割協議書、遺言書等
②「法定相続情報一覧図の写し」
③登記申請書
④固定資産評価証明書(登録免許税を算出するために必要)

※被相続人の最後の氏名及び住所が登記記録上の氏名及び住所と異なる場合や被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には、被相続人が登記記録上の登記名義人であることが分かる被相続人の本籍の記載のある住民票の除票又は戸籍の附票の写し等が必要となります。

  • 登録免許税は、固定資産評価額(千円未満切捨て、1000円未満であるときは1000円)×0.4%の金額(百円未満切捨て、1000円未満であるときは1000円)です。
  • 市区町村役場で管理している固定資産課税台帳の価格がある場合は、一般的に「本年度価格」、「○○年度価格」又は「評価額」と表記されている価格であり、市区町村役場で証明書を発行しています。
  • 固定資産課税台帳の価格がない場合は、登記所が認定した価額で、不動産を管轄する登記所に確認します。

    法務局HP:不動産登記申請様式・同記載例、管轄案内:こちら

農地を相続登記する場合の注意点

農地を売買や贈与によって取得し登記する場合は、農業委員会等の許可を受け、その許可証を添付しなければなりませんが、相続の場合は、この許可は不要です(相続人以外が遺贈により農地を取得する場合は必要です。)。

許可は不要ですが、農業委員会への届出は必要です。

届出は、相続を知った日の翌日から10か月以内に、届出書と登記事項証明書のコピーを農業委員会に提出して行います。

配偶者居住権

「配偶者居住権」制度は、民法改正により、2020年4月1日より施行されました。
施行日である4月1日以降の相続から適用されますが、遺贈については、施行日前にされたものについては適用されません。

配偶者居住権は、長期にわたって自宅に住める権利ですが、その間に自宅の相続人が自宅を売却する可能性もあります。そんなとき、あらかじめ登記をしておけば、身内だけでなく第三者の買主に対しても「住む権利」を主張することができます。

配偶者居住権の設定登記には、前提となる相続登記(被相続人から相続人への建物の所有権移転登記)が必要です。

相続登記をせずに配偶者居住権のみを登記することはできませんので、登記権利者である配偶者居住権者と登記義務者である建物所有者の共同申請によります。

※建物所有者が登記に応じない場合は、訴訟の提起や「仮登記」の申請を検討する必要がありますので、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

「配偶者居住権登記」申請の必要書類

①当事者全員の印鑑証明書付遺産分割協議書、遺言書等
②「法定相続情報一覧図の写し」
③登記申請書
④登記原因証明情報
⑤義務者(建物所有権名義人)の登記識別情報及び印鑑証明書(3ヶ月以内に作成されたもの)
⑥固定資産評価証明書(登録免許税を算出するために必要)

※被相続人の最後の氏名及び住所が登記記録上の氏名及び住所と異なる場合や被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には、被相続人が登記記録上の登記名義人であることが分かる被相続人の本籍の記載のある住民票の除票又は戸籍の附票の写し等が必要となります。

  • 登録免許税は、固定資産評価額(千円未満切捨て、1000円未満であるときは1000円)×0.2%の金額(百円未満切捨て、1000円未満であるときは1000円)です。
  • 市区町村役場で管理している固定資産課税台帳の価格がある場合は、一般的に「本年度価格」、「○○年度価格」又は「評価額」と表記されている価格であり、市区町村役場で証明書を発行しています。
  • 固定資産課税台帳の価格がない場合は、登記所が認定した価額で、不動産を管轄する登記所に確認します。

    法務局HP:不動産登記申請様式・同記載例、管轄案内:こちら

【配偶者居住権の登記の登記事項】不動産登記法

第81条の2 配偶者居住権の登記の登記事項は、第59条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 存続期間
二 第三者に居住建物(民法第1028条第1項に規定する居住建物をいう。)の使用又は収益をさせることを許す旨の定めがあるときは、その定め

「存続期間」と言うのは、配偶者が何年間住み続けることができるのか、という期間のことです。原則として、「配偶者の終身の間」となります(民法第1030条)。

なお、遺産分割の協議や調停・審判、遺言で特に期間を定めている場合は、その期間において長期配偶者居住権が認められます(民法第1030条ただし書き)。

配偶者居住権の登記事項は乙区に記載される

登記簿には、権利部「甲区」と権利部「乙区」があり、甲区には所有権に関する登記が、乙区には所有権以外の権利に関する登記がされます。

それぞれの区をみれば、その不動産の所有者がだれか、また、抵当権などが設定されているかどうかを確認することができます。

そして、配偶者居住権の登記事項は所有権以外の権利に関する登記となるため、「乙区」に記載されることになります。

普通自動車

被相続人の普通自動車を相続するためには、相続による移転登録の手続きを、新所有者となる相続人の使用の本拠となる場所を管轄する運輸支局に対して行うことになります。

この移転登録の手続きは、所有者変更の事由があった日、つまり相続が開始した日から15日以内におこなう必要があります。(道路運送車両法13条1項)

また、被相続人の使用の本拠となる場所から変更になる場合、ナンバープレートを変更しなければなりませんので、申請書と必要書類の他、手続き対象の自動車も運輸支局に持ち込まなければなりません

1.遺産分割協議により新所有者となる相続人が手続きを行う場合の必要書類(代表相続人による一般的な手続き)
①遺産分割協議書(様式)(相続人全員が実印を押印)
又は遺産分割協議成立申立書(様式)
※申請人である相続人が、相続する自動車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証又は査定価格を確認できる資料の写し等を添付した場合に限り使用可能・・・新所有者となる相続人が実印を押印
遺産分割協議書等様式:福島運輸支局HP様式例ダウンロード
②法定相続情報一覧図
③新所有者となる相続人の印鑑証明書
④※車庫証明書(証明後概ね1ヶ月以内(40日以内)のもの)
※被相続人と同居していた相続人が、引き続き利用する場合は、車庫証明が不要
⑤※自動車検査証(原本)
⑥申請書(OCRシート第1号様式)
※新所有者となる相続人が実印を押印
⑦手数料納付書(登録印紙500円)
⑧自動車税・自動車取得税申告書
※相続による取得の場合、自動車取得税は非課税
⑨ナンバープレート(ナンバー変更がある場合)
2.相続人以外の第三者に譲渡する場合の必要書類(代表相続人が手続きを行う場合)
①遺産分割協議書(様式)(相続人全員が実印を押印)
遺産分割協議書等様式:福島運輸支局HP様式例ダウンロード
②法定相続情報一覧図
③代表相続人の譲渡証明書(実印を押印)
④代表相続人の印鑑証明書
⑤新所有者の印鑑証明書
⑥新所有者の車庫証明書(証明後概ね1ヶ月以内(40日以内)のもの)
⑦※自動車検査証(原本)
⑧申請書(OCRシート第1号様式)
※新所有者と代表相続人が実印を押印
⑨手数料納付書(登録印紙500円)
⑩自動車税・自動車取得税申告書
⑪ナンバープレート(ナンバー変更がある場合)
3.被相続人の車を廃車にする場合(永久抹消登録)の必要書類
①法定相続情報一覧図
②申請相続人(1名)の印鑑証明書
③自動車検査証(原本)
④申請書(OCRシート第3号様式の3)
※申請相続人(1名)が実印を押印
⑤手数料納付書(登録印紙無料)
⑥自動車税・自動車取得税申告書
⑦ナンバープレート
⑧解体に係る「移動報告番号」及び「解体報告記録がなされた日」(引取業者に確認)
※車検残存期間が1ヶ月以上の場合、自動車重量税の還付を受けることができます。この申請には以下のものもあわせて必要です。
⑨申請相続人の銀行等の預金口座内容
4.車庫証明の必要書類
①自動車保管場所証明申請書(用紙は警察署で無償配付)
②保管場所の使用権原を疎明する書面
○自己の土地の場合
・自認書(用紙は警察署で無償配付)
○他人の土地の場合(次のいずれか)
・保管場所使用承諾証明書(用紙は警察署で無償配付)
・駐車場の賃貸契約書の写し
・賃貸契約書の写しがない場合は、駐車場使用料金の領収書等
③保管場所の所在図・配置図(用紙は警察署で無償配付)

申請先は、車の保管場所(駐車場の位置)を管轄する警察署です。
また、保管場所は、車の使用の本拠の位置(住所)から2キロメートル以内であることが必要です。

上記相続手続きは、「普通自動車の車検証上の所有者」が被相続人であることを前提としております。
これがローン会社等になっている場合は、遺産分割協議書も戸籍謄本も印鑑証明書もなしに、名義変更や使用者変更ができます。

1.ローンが完済されている場合は、ローン会社に「所有権留保の解除」の手続きをすると、「譲渡証明書」が発行されますので、それをもって相続人のどなたか又は、第三者に名義変更することができます。

2.ローンを完済できない場合は、相続人のどなたかが自動車の使用者という立場で変更手続きを行って使用することができますが、残っているローンの支払いをローン会社と相続人全員でどのようにするか決めていく必要があります。

軽自動車の相続の場合も同様に、遺産分割協議書も戸籍謄本も印鑑証明書もなしに、個人売買や譲渡と同じ手続きで名義変更することができます。

車登録のサポート

当事務所は車の名義変更・車庫証明・出張封印(ナンバー付け替え)にも対応しています。

事務所運営サイト:車登録サポートセンター郡山

その他の名義変更等手続き

手続き名手続き先内容
国民年金市町村の国民年金課・遺族基礎年金請求・寡婦年金請求
・死亡一時金請求・未支給年金請求
国民健康保険市町村の国民健康保険課国民健康保険葬祭費支給申請
厚生年金年金事務所・遺族厚生年金請求・寡婦年金請求
・死亡一時金請求・未支給年金請求
健康保険健康保険組合又は年金事務所被保険者埋葬料支給申請
後期高齢者医療制度(75歳以上)市町村の国民健康保険課後期高齢者医療葬祭費支給申請
生命保険・医療保険等保険会社・郵便局・死亡保険金の請求・入院手術給付金の請求
自動車保険(任意保険)保険会社名義変更又は解約
火災保険保険会社名義変更又は解約
電気料金電力会社名義変更又は解約
水道料金市町村の水道課名義変更又は使用中止
電話料金通信会社名義変更又は解約
NHK受信料NHK名義変更又は解約
運転免許証警察署免許証の返納
クレジットカードカード会社解約

当センターのサポート

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