遺産分割

相続人が複数いる場合、相続が開始されると、その相続財産は共同相続人の共有となります。(民法第898条)

そして、共同相続人は、それぞれの相続分に応じて相続財産を包括承継することになります。(民法第899条)

相続人が1人の場合であれば、相続財産はその相続人の単独所有となるため遺産分割の問題は生じませんが、相続人が複数いる場合には、いずれは各相続人に分配させる遺産分割の手続が必要になります。

遺産分割の基準

民法は、遺産分割の基準について、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」(民法第906条)としています。

これは、家庭裁判所の審判に適用されるものですが、遺産分割の協議や調停においても指針となるものです。

実際の遺産分割は次のようになされます。

遺産分割手続の流れ

① 被相続人が遺言により全ての遺産について、分割の方法を定めている場合はそれによります。(民法第908条)

② 遺言がないときは相続人の協議により遺産の全部又は一部の分割方法を決めます。(民法第907条第1項)
遺産分割協議は、遺言が一部の遺産の分割の方法について定めていない場合も必要となります。また、遺産分割協議が不要な場合でも、相続人の協議で遺言の指定する遺産分割とは異なる分割をすることも可能です。

③ 遺産分割協議が不成立の場合は、家庭裁判所に調停を申立て、調停の席において話し合いで決めます。(民法第907条第2項)

家庭裁判所に申立てる調停・審判は、いずれを申立ててもかまいませんが、実務上は、調停を申立てるケースがほとんどといわれています。

遺産分割調停:詳しくは裁判所HP

④ 調停が不調の場合は、審判手続に移り、家庭裁判所が遺産分割の方法を決定します。

 

遺産分割協議

相続人が1人の場合であれば、遺産を全て単独で相続することができます。しかし、実際は相続人の数は複数になることの方が多いのではないかと思います。

そこで問題となるのは遺産をどのように分けるのかを決めることです。
この遺産をどのように分割するのかを共同相続人が話し合うことを遺産分割協議といいます。

遺産分割協議は、共同相続人全員の参加が必要です。また、遺言による包括遺贈者(民法第990条)や相続分譲受人(民法第905条参照)がいる場合にはその人も分割協議に参加します。

全員が参加せずに一部の相続人が勝手に遺産分割協議を行ったとしても無効になります。

遺産分割協議における共同相続人全員の参加とは、必ずしも全員が同じ場所に集まって行わなければならないものではありません。相続人が遠方にいる場合など、電話やファックスなどの通信手段を用いて協議を進めることもできます。

そして、有効な協議分割となるためには、分割内容について共同相続人全員が合意することが必要です。

 

遺産分割の方法

遺産をどのように分割するかは、主に次の3つの方法を用いて決めます。

遺産分割の方法内容
現物分割・文字通り現存する遺産をそのまま相続人間で分配する方法です。
・遺産を各相続人の希望に沿って分けることで折り合いがつくのであれば、現物分割の方法によることができます。
代償分割・特定の相続人が、遺産を多く承継する代わりに、他の相続人に金銭を支払って過不足分を調整する方法です。
・不動産が1つしかなくそれを現物で分けるのが難しい場合や、遺産を現物で分けると価格が不均衡になる場合には、代償分割は便利な方法です。
換価分割・遺産の一部又は全部を売却して、その売却代金を相続人間で分配する方法です。
・遺産分割の方法としては、まず現物分割により調整がつかないかを協議し、どうしても難しい場合に、現物分割に代償分割、換価分割を組み合わせた方法により調整して協議すればよいでしょう。

遺産分割の当事者

遺産分割協議に参加させなければならない人は、次のとおりです。

当事者内容
法定相続人・配偶者は法律上の婚姻関係にある者
・未成年・行方不明・判断能力のない相続人がいる場合は所定の手続により参加させます。
包括受遺者・「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」とされています。(民法第990条)
相続分の譲受人・相続分を譲り受けた者(民法第905条は、相続分の譲渡が可能であることを前提とした条文であるため)
遺言執行者・「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」とされています。(民法第1013条)
・遺言執行者の同意なく相続人全員で遺言の内容と異なる遺産分割協議を成立させることができるかについては争いがあり、通常は遺言執行者がいれば、遺産分割協議に参加してもらい同意を得た方がよいとされています。

遺産分割協議書

「遺産分割協議書」とは、相続する財産の分割内容が記載され、相続人全員が署名捺印した書類のことをいいます。

相続をする際に必ず作成しなければならないというものではありませんが、不動産の名義変更登記をする際や相続税の申告が必要な場合には必要となりますし、その他の名義変更手続き等においても、遺産分割協議書があると手続きがスムーズに行く場合があります。

遺産分割協議書は、相続の内容を記録した大切な資料となりますので、後々になってからのトラブルを避けるためにも、作成しておくことをおすすめします。

遺産分割協議書には決まった書式や様式はありませんし、期限もありません。
ただし、相続税の申告が必要な場合には、10ヶ月以内という期限があり、それまでに遺産分割協議が成立していない場合には、配偶者の相続税額控除などの税額軽減の恩恵を受けられなくなってしまいますので、遺産分割協議は速やかに行うことが必要です。

 

遺産分割協議書作成の留意事項

現物分割の場合は、財産を特定し、取得する人と明確に対応するように記載します。

記載事項等留意事項
被相続人・誰の相続についての遺産分割協議書なのかが分かるように被相続人の「氏名」「本籍」「最後の住所」「生年月日」「死亡年月日」を戸籍等に記載されているとおりに記載します。
不動産・配偶者居住権・登記簿謄本(全部事項証明)や権利証に記載されているとおりに記載します。
・ 記載に間違いがあった場合、法務局での手続きが進められない場合がありますので十分注意する必要があります。
・土地:「所在」「地番」「地目」「地積」
・建物:「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」
預貯金・株式等・通帳や証券に照らして、「金融機関名」「支店名」「口座の種類」「口座番号」「金額」・「株数」等を記載します。
自動車・「登録番号」「車名」「型式」「車台番号」を自動車検査証に記載されているとおりに記載します。
負債を負担する場合・ある相続人が負債を負担する場合には、「金融機関名」「借入金(相続開始日の残高)」を記載します。
代償分割がある場合 ・ある相続人が不動産などの財産を取得するにあたって、その代償として他の相続人に対して金銭を支払う旨を定めた「代償分割」の場合には、「代償金額」「支払期限」を記載します。
新たな財産が発見された場合の備え・後日遺産の存在が判明した場合の遺産分割方法について合意をし、その合意内容を遺産分割協議書に記載します。
・記載例:
①新たな財産は特定の相続人が取得する。
②新たな財産につき改めて分割の協議をする。
③新たな財産について取得の割合を定めておく。
相続人の住所・氏名・住所や氏名については、住民票や印鑑登録証明書に記載されているとおりに記載します。
・相続放棄を行った相続人以外の相続人はたとえ遺産を相続しないことになっても全員(未成年者がいる場合は特別代理人)が遺産分割協議書に記載する必要があります。
相続人の署名・捺印・印鑑登録証明書添付・相続人の氏名は署名(本人が自筆で氏名を手書きすること)で、実印を押捺します。
・添付する印鑑登録証明書に有効期限はありませんが、金融機関などによっては「3ヶ月以内に発行のもの」などの期限がある場合がありますので注意が必要です。
複数ページになる場合・遺産分割協議書が1ページでおさまらないときは、各用紙をホッチキス止めした上、綴り目に相続人全員の契印をします。
作成通数・遺産分割協議に参加した人数分の通数を作成して、各自1通を保有します。

遺産分割協議書記載例(配偶者居住権付)こちら

 

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