相続財産の確定

相続財産の把握は、次の遺産分割協議を行なうにあたっての重要な基本資料となります。
また、これによって相続放棄や限定承認の手続きが必要なのか、相続税は課税されるのか、などの判断することができます。

特に相続放棄等の手続きは、「相続の開始を知った日から3ヶ月」(民法第915条)と非常に短い期間のうちにしなければならないので、できる限り早く調査して把握する必要があります。

相続財産の内容

相続人は、被相続人の財産に属した権利義務は、原則として相続できますが、被相続人の一身に専属した権利義務は、相続の対象になりません。(民法第896条)

相続財産には、土地や建物のような不動産、自動車や美術品のような動産、預金のような債権などのプラスの財産だけでなく、借金のようなマイナスの財産も含まれます。

また、被相続人が借地や借家の権利を有していたときの借地権、借家権といった権利や、被相続人が生前に財産を売買していたときの売主もしくは買主としての地位といった権利義務や他人の不法行為によって被害者が死亡した場合には、被害者が生きていたならば得たであろう利益(逸失利益)の賠償と、被った精神的損害(慰謝料)の賠償の請求権も相続の対象になります。

 

相続財産とならないもの

  1. 一身専属権(被相続人の一身に専属したもの)
    個人に与えられた年金の受給権や許認可(個人事業の営業許可など)、行政書士や弁護士、税理士などの国家資格や運転免許など
  2. 保証債務
    身元保証債務や責任の限度額や保証の期間を定めていない包括的保証債務は、相互の信頼にもとづくその人かぎりの保証という面が強いと考えられるため、相続されません。
    ただし、身元保証により相続開始時にすでに発生していた損害賠償義務等は相続されます。
    なお、金銭貸借や賃貸借の保証など普通の保証債務は相続されます。
  3. 社員権
    合名会社の社員権や合資会社の無限責任社員の社員権は相続されません。
    なお、株式会社の株主権や、合資会社の有限責任社員の地位は相続されます。
  4. 生命保険金請求権・死亡退職金・ 遺族年金
    受取人や受給権者が法律や契約により特定の者に指定されているときは、その者の固有の権利となり、相続財産にならないとされています。(生命保険金・死亡退職金と相続
  5. 香典・弔慰金
    葬儀の際の香典の性質は、相続財産ではなく、葬式費用の一部を負担し、遺族に対する相互扶助の精神にもとづくものであり、一般的には喪主に贈られたもの解されています。したがって、相続財産とはなりません。
    弔慰金には、死亡退職金に相当するものと、香典に相当するものとがあります。一般的には社会的に見て香典相当の金額であれば香典、それを超えて遺族の生活保障に役立つほどの金額であれば死亡退職金ということになると思われます。
  6. 祭祀財産
    祭祀を営むための系譜(家系図)、祭具(仏壇・位牌など)、墳墓(墓地・墓石)などの祭祀財産は、相続財産に属せず、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。(民法第897条)
    ① 被相続人が指定したときはその者が、② 指定がないときは慣習にしたがって、③ 慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定める、とされています。

 

相続財産の調査

主な相続財産(遺産)の調査の対象は、被相続人の預貯金通帳と郵便物です。
預金通帳でお金の流れを調査し、郵便物で財産の管理をしている金融機関や証券会社、不動産など固定資産を把握している市区町村が判明し、それらに問い合わせて相続財産の存在を調査します。

相続財産調査方法
不動産①市町村役場で被相続人の固定資産税課税台帳(名寄帳)を取り、それをもとに、被相続人名義の固定資産評価証明書を交付してもらいます。(相続が開始した日の属する年度のもの。)

②法務局で、①で取得した証明書に記載されている不動産について登記簿謄本(全部事項証明書)を請求します。

③同じく法務局で、固定資産評価証明書に記載されている所在地の土地の公図を請求します。

④取得した登記簿謄本を確認し、その土地や家屋に抵当権などが設定してある場合には、被相続人に借金がある可能性がありますので、契約書等(相続開始日を含む期間についてのもの)を探します。

⑤その土地や家屋が他人に貸しているものである場合には、その賃貸契約書(相続開始日を含む期間についてのもの)を探します。

⑥③で取得した公図をもとに、住宅地図などで、公図上の土地がどこに位置するのか、わかるようにしておきます。

⑦不動産の財産調査を行う際は、被相続人との続柄が分かる戸籍謄本や身分証明書などが必要になります。

※1不動産の所在地が分からない場合は、市町村役場から郵送されてくる固定資産税の納付書などをもって不動産調査をしていきます。

※2不動産の評価額については、実勢価格評価、路線価評価、固定資産評価等、がありますが、まずは固定資産評価証明書に基づく価格を評価額として相続財産目録に記載することが、最も簡便なため、現実によく行なわれています。
なお、これらの調査の中には遺産名義変更には直接関係ない事項も入っていますが、相続税の申告に際して、土地の評価を正確に行う為に不可欠なものですので、できる限りこの段階で行なっておくことをお勧めします。
預貯金・有価証券①預貯金の調査は、基本的に被相続人の預金通帳で行います。預金通帳が見つかったら、被相続人が利用していた金融機関の支店に「預金残高証明書」(相続開始日現在の日付で請求)を発行してもらいます。
これにより被相続人の借入金が判明する場合もあります。

②預金通帳が見つからない場合は、利用していた可能性のある金融機関に、被相続人の口座の有無を確認する必要があります。被相続人がクレジットカードや通信販売などのサービスを利用していた場合は、それらの利用明細などに、引き落とし口座の手がかりとなる情報が記載されていることもあります。

③株式や債券などの有価証券を所有していた場合は、それらを扱っている金融機関や証券会社などに「残高証明書」(相続開始日現在の日付で請求)を発行してもらいます。

④預貯金等の財産調査を行う際は、被相続人との続柄が分かる戸籍謄本や身分証明書などが必要になります。
車・動産①車は車検証により所有者が判明します。車をローンで購入した場合はほとんど場合、販売店・信販会社が所有者となっています。この場合は、相続手続きは不要です。
自動車の現在価値は、中古車市場の相場をみて判断します。

②他の動産では鑑定や、動産の市場調査を行い、価格を検討していきます。
借金財産調査のなかで、もっとも難しいのが借金の調査です。
借金は誰にも知られたくないという思いから、隠している場合があるからです。

①被相続人の部屋や大切なものを保管していそうな場所から、郵便物や契約書やキャッシュカード、利用明細などがないかを調べてみる必要があります。
また、債務額については、金融機関に対して「借入金残高証明書」を発行して貰います。

②①の調査で判明しない場合は、更にクレジット情報などを管理している下記の「個人信用情報機関」に対して、被相続人の情報開示を求めることができます。

 

個人信用情報機関への開示請求

信用情報の開示請求は、JICC、CICの場合は、スマートフォン(パソコン)、郵送、窓口の受付方法があります。
全国銀行個人信用情報センターの場合は、郵送のみの受付となっています。なお、開示請求の際に被相続人との続柄が分かる戸籍謄本や身分証明書などが必要になります。

名称加盟金融機関
株式会社日本信用情報機構(JICC)
手数料:1,000円(税込)
問合せ先:0570-055-955
主に貸金業、クレジット事業、リース事業、保証事業、金融機関事業等の与信事業を営む企業を会員とする個人信用情報機関
株式会社シー・アイ・シー(CIC)
手数料:1,000円(税込)
問合せ先:0570-666-414
主に割賦販売等のクレジット事業を営む企業を会員とする個人信用情報機関
一般社団法人全国銀行協会(全国銀行個人信用情報センター)
手数料:1,000円(税込)郵送のみ
問合せ先:0120-540-558
銀行・信金などを会員とする個人信用情報機関

 

相続財産目録の作成

財産目録は、必ず作成しなければならないものではありませんが、作成することで次のようなメリットがあります。

相続税の申告が必要となった場合相続税の申告書には、必ず相続財産の一覧表を作成する項目があり、きちんとした相続財産目録を作成しておけば、申告書の様式に相続財産目録をもとに転記するだけで済むことから、相続税申告書作成の手間が大幅に軽減できます。

もう一つは、遺産分割協議の際に、相続財産全体の内容が一目でわかる相続財産目録を作成し相続人全員に配布することにより、相続人間で漏れのない検討を行うことができ、結果として協議が円満にまとまりやすいことになります。

相続財産目録はこちら

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