1.認知症対策
Aさん(78歳)は、アパートを持っており、認知症の奥様と暮らしています。お子さんは、長男(53歳)・二男(50歳)二人で、それぞれ別世帯で暮らしており、近所に住む長男の家族が奥様の介護のサポートをしています。
Aさんは高齢になってきたこともあり、アパートの管理を負担に感じています。建て替え時期も迫っているのでその検討も必要です。
Aさんは、自分が亡くなったら、自宅とアパートを含めた財産はすべて奥様に相続させたいと考えていますが、遺言の書けない奥様亡き後、自宅は長男に、アパートは二男に遺したいと考えています。
1.Aさんを委託者、長男を受託者、Aさんを第一受益者・奥様を第二受益者とし、アパートと自宅不動産、金融資産の大半を信託財産とする信託契約を締結します。
- 委託者と受益者がAさんなので、名義を受託者長男に移転しても、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税などは発生しません。
- 将来Aさんが判断能力を喪失したり、亡くなった場合でも、受託者である長男が単独で不動産などの管理や生活費の支払等の財産管理を行うことでき、奥様が施設への入所を検討することになっても対応することができます。
大規模修繕も建替えも長男の名前でできます。信託契約に金融機関からの借入れも入れておけば、借入もすることができます。
2.Aさん、そして奥様が亡くなった時に信託契約は終了して、残余の信託財産のうち、自宅と金融資産の1/2は長男に、アパートと金融資産の1/2は二男に帰属するように設定します。
- ①Aさん、②奥様、③長男・次男と財産承継が一つの民事信託契約でできたことになり、これは遺言ではできないことです。
- 相続税は、Aさんから奥様、奥様から長男・二男へと財産権が移った時点で、それぞれかかります。
2.空き家問題対策
Aさん(80歳)は、お子さんが一人いますが、離れて一人暮らしをしています。
夫は他界しており、最近物忘れや足腰が悪くなってきたことから、高齢者施設への入居を考えております。
空き家になった自宅は、毎月の施設利用料を確保するためにも、お子さんと相談し売却したいと考えています。
1.Aさんを委託者、長男を受託者、Aさんを受益者とし、自宅と預金の大半を信託財産とする信託契約を締結します。
- 委託者と受益者がAさんなので、名義を受託者長男に移転しても、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税などは発生しません。
- Aさんが判断能力を喪失した場合でも、受託者である長男が単独で不動産などの管理・処分を行うことでき、施設への入所費用に充てることができます。
- 民事信託を利用しないで、Aさんが認知症などで、判断能力が喪失した場合には、資産は凍結され、施設へ入居するための自宅の売却処分もできず、空き家問題が発生します。
2.Aさんが亡くなった時に信託契約は終了して、残余の信託財産は長男に帰属することになります。
- 相続税は、Aさんから長男へと財産権が移った時点でかかります。
空き家問題 | |
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日本の認知症患者数は2012年時点で460万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症と診断されています。 2025年には700万人、65歳以上の高齢者の約4人に1人が認知症になると推定されており、これは65歳以上高齢者のおよそ20%にあたります。 独居の高齢者が認知症になった場合、介護施設に入るか、在宅での介護体制が必要になりす。 認知症になるとその方の資産は凍結されてしまいます。 家の持ち主(登記名義人)が認知症になった場合、その家を売却したりリフォームしたりすることは非常に困難になり、本来さまざまに活用できるはずの「家」という財産が、なにも生み出さない「空き家」になってしまうことで、本人や家族の生活に大きな支障がでる恐れがあります。 |
3.親なき後問題対策
Aさん(79歳)には、長女(54歳)、長男(50歳)二人のお子さんがいます。長女には障害があり自立生活が難しいため、Aさんのご自宅に同居しています。
長男は結婚して近所に4人家族で暮らしており、いつも長女のことを気にかけてくれています。
Aさんは元気でいる間は自分で長女との生活を維持していきたいと考えていますが、もし自分が亡くなったら、障害を持った長女の生活保障ために財産を残してあげたいと考えています。
1.所有者であるAさんを委託者、長男を受託者、Aさんを第一受益者・長女を第二受益者とし、自宅と預金の大半を信託財産とする信託契約を締結します。
- 委託者と受益者がAさんなので、名義を受託者長男に移転しても、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税などは発生しません。
- 将来Aさんが判断能力を喪失したり、亡くなった場合でも、受託者である長男が単独で自宅の管理や生活費の支払等の財産管理を行うことでき、長女が施設への入所を検討することになれば、必要に応じて自宅の売却も行うことができます。
- 万一、長男が長女よりも早く亡くなってしまった場合に備えて、長男に代わる受託者を長男の奥様と長男の子に託す契約にしておきます。
2.Aさん、そして長女が亡くなった時に信託契約は終了して、残余の信託財産は長男に帰属することになります。
- Aさん、長女と財産承継が一つの民事信託契約でできたことになり、これは遺言と同じ効果があります。
- 残余財産の帰属先は長男で契約しておきますが、万一、長男が先に亡くなってしまった場合に備えて、長男の奥様や子が残余財産を受け取れる契約を追加しておきます。
- 相続税は、Aさんから長女、長女から長男へと財産権が移った時点で、それぞれかかります。
4.不動産共有名義回避対策
Aさん(77歳)は、自宅兼アパートを持っており、一人暮らしをしています。
お子さんは、長男(50歳)・長女(46歳)の二人で、それぞれ別世帯で暮らしており、近所に住む長女がサポートをしています。
子供のうち誰か一人に当該不動産を単独で相続させるには、それに見合うだけの他の資産がありません。
不動産は長女に相続させたいと思っていますが、長男・長女それぞれの家庭に孫もおり、どうすればよいか思案しています。
1.Aさんを委託者、長女を受託者、Aさんを第一受益者、長男・長女を第二受益者とし、アパート兼自宅不動産、金融資産の大半を信託財産とする信託契約を締結します。
- 委託者と受益者がAさんなので、名義を受託者長女に移転しても、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税などは発生しません。
- 将来Aさんが判断能力を喪失したり、亡くなった場合でも、受託者である長女が単独で自宅の管理や生活費の支払等の財産管理を行うことでき、必要に応じて自宅の修繕や売却も行うことができます。
2.Aさんが亡くなった時に信託契約は終了して、残余の信託財産は2分の1ずつ、長男・長女に帰属するように設定します。
- 信託契約書の中で、Aさんの相続発生時には受益権の2分の1を長男が、2分の1を長女が承継すると定めておけば、Aさんの遺産の半分ずつを相続したことと同じになります。
その結果、賃料収入や売却代金等の半分ずつをそれぞれ受け取ることができます。 - 相続税は、Aさんから長男・長女へと財産権が移った時点で、それぞれかかります。
5.事業承継対策
Aさん(75歳)は、A社の創業者で、自社株(非公開会社)を100%保有するオーナー社長です。
お子さんが2名(長男(51歳)・二男(47歳))おり、長男を後継者として育てている最中ですが、最近体力の衰えも感じています。
Aさんは、自分が亡くなったら、株式の配当はお子さん2人で分けられるようにと考えています。
1.Aさんを委託者、長男を受託者、Aさんを受益者・「指図権者」とし、A社株式を信託財産とする信託契約を締結します。
- 委託者と受益者がAさんであり、名義だけを受託者である長男とする信託契約としているため、贈与税や譲渡所得税などは発生しません。
- Aさんが元気なうちは「指図権」を使い会社経営を行いつつ、長男の成長ぶりを見ながら段階的に権限移譲を行っていき、やがてすべての権限を長男に任せることができます。
- 将来Aさんが判断能力を喪失した場合でも、株の名義は受託者である長男一人であるため、長男単独で会社経営を自分の判断で行うことができます。
- もし、長男が不適格だったり、会社を引き継がない場合でも、受益権を渡していないので、Aさんの判断で信託契約を解約することができます。
2.Aさんが亡くなった時に信託契約は終了して、株式配当の受益権は長男、二男に承継されるようにします。
- 相続税は、株式配当の受益権に対して長男、二男にかかります。
6.子供がいない夫婦の財産承継対策
Aさん(74歳)には親から相続した自宅とアパートがあります。
Aさんご夫婦には、お子さんがいません。
このままだと、妻亡き後の財産は、妻の兄弟が相続することになってしまうので、自分の家系である弟の子(甥)に継がせたいと思っています。
1.Aさんを委託者、甥を受託者、Aさんを第一受益者・奥様を第二受益者とし、自宅とアパートの不動産を信託財産とする信託契約を締結します。
- 委託者と受益者がAさんなので、名義を受託者甥に移転しても、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税などは発生しません。
- 将来Aさんが判断能力を喪失したり、亡くなった場合でも、受託者である甥が単独で不動産の管理ができます。
必要な場合は、大規模修繕も建替えも甥の名前でできます。
2.Aさん、そして奥様が亡くなった時に信託契約は終了して、残余の信託財産は甥に帰属することになります。
- ①Aさん、②奥様、③甥と財産承継が一つの民事信託契約でできたことになり、これは遺言ではできないことです。
- 相続税は、Aさんから奥様、奥様から甥へと財産権が移った時点で、それぞれかかります。
ただし、甥への相続税は、2割加算となります。
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