配偶者居住権の設定登記
「配偶者居住権」制度は、民法改正により、2020年4月1日より施行されました。
施行日である4月1日以降の相続から適用されますが、遺贈については、施行日前にされたものについては適用されません。
配偶者居住権は、長期にわたって自宅に住める権利ですが、その間に自宅の相続人が自宅を売却する可能性もあります。そんなとき、あらかじめ登記をしておけば、身内だけでなく第三者の買主に対しても「住む権利」を主張することができます。
配偶者居住権の設定登記には、前提となる相続登記(被相続人から相続人への建物の所有権移転登記)が必要です。
相続登記をせずに配偶者居住権のみを登記することはできませんので、登記権利者である配偶者居住権者と登記義務者である建物所有者の共同申請によります。
※建物所有者が登記に応じない場合は、訴訟の提起や「仮登記」の申請を検討する必要がありますので、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
「配偶者居住権登記」申請の必要書類
①当事者全員の印鑑証明書付遺産分割協議書、遺言書等 ②「法定相続情報一覧図の写し」 ③登記申請書 ④登記原因証明情報 ⑤義務者(建物所有権名義人)の登記識別情報及び印鑑証明書(3ヶ月以内に作成されたもの) ⑥固定資産評価証明書(登録免許税を算出するために必要) |
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※被相続人の最後の氏名及び住所が登記記録上の氏名及び住所と異なる場合や被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には、被相続人が登記記録上の登記名義人であることが分かる被相続人の本籍の記載のある住民票の除票又は戸籍の附票の写し等が必要となります。
- 登録免許税は、※固定資産評価額(千円未満切捨て、1000円未満であるときは1000円)×0.2%の金額(百円未満切捨て、1000円未満であるときは1000円)です。
- ※市区町村役場で管理している固定資産課税台帳の価格がある場合は、一般的に「本年度価格」、「○○年度価格」又は「評価額」と表記されている価格であり、市区町村役場で証明書を発行しています。
- 固定資産課税台帳の価格がない場合は、登記所が認定した価額で、不動産を管轄する登記所に確認します。
法務局HP:不動産登記申請様式・同記載例、管轄案内:こちら
【配偶者居住権の登記の登記事項】不動産登記法
第81条の2 配偶者居住権の登記の登記事項は、第59条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 存続期間
二 第三者に居住建物(民法第1028条第1項に規定する居住建物をいう。)の使用又は収益をさせることを許す旨の定めがあるときは、その定め
「存続期間」と言うのは、配偶者が何年間住み続けることができるのか、という期間のことです。原則として、「配偶者の終身の間」となります(民法第1030条)。
なお、遺産分割の協議や調停・審判、遺言で特に期間を定めている場合は、その期間において長期配偶者居住権が認められます(民法第1030条ただし書き)。
配偶者居住権の登記事項は乙区に記載される
登記簿には、権利部「甲区」と権利部「乙区」があり、甲区には所有権に関する登記が、乙区には所有権以外の権利に関する登記がされます。
それぞれの区をみれば、その不動産の所有者がだれか、また、抵当権などが設定されているかどうかを確認することができます。
そして、配偶者居住権の登記事項は所有権以外の権利に関する登記となるため、「乙区」に記載されることになります。