預貯金債権の仮払制度の創設

預貯金債権については、これまでの判例では、当然分割の原則によって法定相続分に応じて各相続人に帰属し、遺産分割の対象にはならないとされてきましたが、平成28年12月28日の最高裁大法廷決定(民集70・8・2121)において、預貯金債権が遺産分割の対象に含まれると判断されたため、遺産分割までの間は、共同相続人全員が共同して行使しなければならず、配偶者等の一部の相続人が当面の生活費や葬儀費用に充てるため、一部払い戻すことができないという不都合が生じるおそれがあることとなりました。

1.遺産の分割前における預貯金債権の行使(改正民法第909条の2)

遺産に属する預貯金債権について、当面の生活費など相続開始後の資金需要に対して、簡易迅速な払い戻しを可能とするために、家庭裁判所の許可なく金融機関の窓口において、一定の上限を設けた上で、払い戻しを受けることを認める制度が創設されました。【施行日:2019.7.1】
なお、遺贈・贈与された預貯金債権は、「遺産に属さない」ことになるため、本件適用はありません。

2.単独で払い戻しができる金額等

各金融機関ごとに各共同相続人が単独で払い戻しできる金額の計算式は次のとおりです。
なお、この金額の上限は、法務省令により、150万円に設定されました。

また、この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなされます。

  • 単独で払い戻しができる金額=相続開始時の預貯金債権額(口座基準)×1/3×当該払い戻しを求める共同相続人の法定相続分

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