生命保険金・死亡退職金と相続

Ⅰ 生命保険金

生命保険金が相続財産に当たるかどうかは、契約内容や受取人によって違いがあります。

1.保険金の受取人として「特定の人」を指定している場合

支払われる保険金は受取人の固有財産として扱われ、相続財産には含まないため遺産分割の対象にはなりません。

(例)契約者、被保険者が共に被相続人(夫)で、保険金の受取人が相続人である妻などといったように、具体的な個人が指定されている場合には、受取人個人の固有の財産と考えられます。

2.保険金の受取人を単に「相続人」とした場合

支払われる保険金は受取人の固有財産として扱われ、相続財産には含まないため遺産分割の対象にはなりません。

そして、相続人の共有財産となることから、受取人の取り分に関して特に指定がない場合は、各人が平等に分配すればよく、法定相続分に応じて分ける必要はありません。

(注)相続人が複数人の場合、保険金を請求できるようになった時点での相続人が受取人とされます。
(相続人のなかに相続放棄をした者がいたとしても、その者の保険金請求権には影響ありません。)

3.保険金受取人の指定がない場合

このような場合、保険金受取人は保険約款の適用を受けます。

  1. 保険約款において、保険金受取人を被保険者の相続人としたり、被保険者の配偶者や子、父母などをこの相続順にしている場合、支払われる保険金は受取人の固有財産として扱われ、相続財産には含まないため遺産分割の対象にはなりません。
  2. これに対し、保険約款において、保険金受取人を民法の規定を適用するとしている場合には、保険金請求権は相続財産になるという考え方と、保険金請求権は受取人の固有財産であって相続財産ではないという考え方があり、争いがあるところです。

4.保険金の受取人が「被相続人」自身の場合

この場合、指定された保険金受取人はいないことになりますから、「3.」の場合と同様になります。

5.保険金受取人の特別受益

生命保険金が、特別受益に該当するのか否かについては、見解が分かれており、最高裁は、被相続人の死亡により死亡生命保険金請求権を取得した相続人と、その他の相続人との間に生じる不公平が民法903条の趣旨に照らし、到底是認することができないほどに著しいものと評価すべき特段の事情がある場合には、同条を類推適用して、当該死亡保険金請求権は、特別受益に準じ持ち戻しの対象となると解するのが相当であるとし、原則としては特別受益として扱わなくてよいとしました。

特段の事情とは

特段の事情の有無については、保険金の額、その額の遺産総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人に対する介護等に対する貢献度合いなどの保険金受取人である相続人及び共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきものであるとしています。

Ⅱ 死亡退職金

退職金規程によって受給権者の定めがあるか否かによって、扱いが異なります。

1.受給権者の定めがある場合

この場合、死亡退職金請求権は受給者固有の権利であり、相続財産に含まないため遺産分割の対象にはなりません。

2.受給権者の定めがない場合

この場合については、見解が分かれており、相続財産となるか受給者の固有財産となるかは、個々のケースによる判断となりますが、判例は相続財産とすることが多いようです。

3.死亡退職金受給者の特別受益

この点についても見解が分かれており、死亡退職金は賃金の後払い的性格を有していることから、実質は遺産に類似するとして、共同相続人間の実質的公平を図るためにこれを特別利益とみるべきとする判例と、特別受益であることを認めるとかえって共同相続人間の実質的公平を欠く場合があり、死亡退職金の生活保障的側面を害するので特別受益と見るべきでないとする判例があります。

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