遺言書とは
遺⾔書(いごんしょ・ゆいごんしょ)とは、故⼈が遺族の遺産相続を円滑に進められるよう、遺産などに関する
ことについて⾃分⾃⾝の意思表⽰を形にして残し、死後に実現させるための証書です。
1.遺言書の種類と特徴
遺言には厳格な方式が定められており、この方式に従った遺言でなければ遺言書としての効力はもちません。
方式 種類 特徴
普通方式 自筆証書遺言
(改正民法第968条)・遺言者が自筆で遺言の内容を書き、押印することにより作成
・財産目録については、パソコンによる記載や預貯金通帳などのコピーでも良い【施行日:2019.1.13】
公正証書遺言
(民法第969条)・遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で述べ、これを公証人が筆記して作成
・検認が不要
・証人2名以上の立会が必要
秘密証書遺言
(民法第970条)・遺言者本人が作成し、封書に入れ封印した遺言書を公証人に提出し、公証人が封紙に提出月日と遺言者が申し述べる住所氏名を書いて作成
・証人2名以上の立会が必要
特別方式 危急時遺言 死亡危急者遺言
(民法第976条)疾病やその他の理由で死亡の危機がある場合に、3名以上の証人の立会いの下で行う遺言
船舶遭難者遺言
(民法第979条)遭難中の船舶の中で死亡の危機がある場合に、証人2名以上の立会いの下で行う遺言
隔絶地遺言 伝染病隔離者遺言
(民法第977条)伝染病などで外界との接触を断たれた場所にいる者が、警察官1名と証人1名以上の立会いの下で行う遺言
在船者遺言
(民法第978条)船舶中で外界から隔絶されている者が、船舶関係者1名及び証人2名以上の立会いの下で行う遺言
・一般的に利用される遺言書の大部分は、普通方式の「自筆証書遺言書」と「公正証書遺言書」です。
・特別方式の遺言は、遺言者が普通方式の遺言ができるようになった時から6ヶ月間生存した場合は無効となります。(民法第983条)
2.普通方式遺言のメリット・デメリット
下記のとおり、それぞれ特徴がありますので、ご自身に合った方式を選択しましょう。
種類 メリット デメリット
自筆証書遺言 ・自筆で、印鑑があればいつでもどこでも作成可能
・手続きがないので費用がかからない
・書き直しや修正も自由
・所定のフォーマットもないので書き方は自由
・遺言書の作成自体を秘密にしておくことができる
・財産目録はパソコンによる記載が可能
・遺言書保管制度【施行日:2020.7.10】利用で検認不要、滅失・偽造・変造のおそれがない・書き方を間違えると無効になる危険がある
・「検認」手続が面倒
・検認をせずに開封すると5万円の過料
・自筆できない場合は利用できない
・滅失・盗難・偽造・変造のおそれがある
公正証書遺言 ・字が書けない場合(手や目が不自由等)であっても公証人が関与しているので作成できる
・遺言書として無効になることはない
・遺言内容が正確になる
・書き方の不備がない
・検認が不要
・原本が公証役場に保管されるので・滅失・盗難・偽造・変造のおそれがない・事前に取り決めた日時に公証役場・自宅・病院などで作成
・作成に時間がかかる
・費用が発生する(証書作成手数料、数万円~)
・証人2名の立会いが必要
・証人から遺言書の存在や内容が漏れる可能性がある
秘密証書遺言 ・ワープロや代筆作成も可能
・遺言書が本人のものであることを明確にできる
・遺言の内容を秘密にできる
・公証人が関与するので遺言書の存在を確認することができる
・偽造・変造のおそれがない・事前に取り決めた日時に公証役場・自宅・病院などで作成
・公証人も遺言内容を確認できない
・書き方を間違えると無効になる危険がある
・家庭裁判所での「検認」手続が面倒
・検認をせずに開封すると5万円の過料
・費用が発生する(証書作成手数料、定額11,000円)
・証人2名の立会いが必要
・証人から遺言書の存在が漏れる可能性がある
・滅失・盗難のおそれがある
日本公証人協会HP:(遺言→公正証書遺言の作成→公正証書遺言の作成手数料)
遺言公正証書の作成手数料は、遺言により相続させ又は遺贈する財産の価額を目的価額として計算します。遺言は、相続人・受遺者ごとに別個の法律行為になります。数人に対する贈与契約が1通の公正証書に記載された場合と同じ扱いです。したがって、各相続人・各受遺者ごとに、相続させ又は遺贈する財産の価額により目的価額を算出し、それぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。
例えば、総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は、3①の方式により、4万3000円です(なお、下記のように遺言加算があります。)が、妻に6000万円、長男に4000万円の財産を相続させる場合には、妻の手数料は4万3000円、長男の手数料は2万9000円となり、その合計額は7万2000円となります。ただし、手数料令19条は、遺言加算という特別の手数料を定めており、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1000円を加算すると規定しているので、7万2000円に1万1000円を加算した8万3000円が手数料となります。
次に祭祀の主宰者の指定は、相続又は遺贈とは別個の法律行為であり、かつ、目的価格が算定できないので、その手数料は1万1000円です。
遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張して遺言公正証書を作成しますが、この場合の手数料は、遺言加算を除いた目的価額による手数料額の1.5倍が基本手数料となり、これに、遺言加算手数料を加えます。この他に、旅費(実費)、日当(1日2万円、4時間まで1万円)が必要になります。
作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管しますが、保管のための手数料は不要です。
3.改正民法下で自筆証書遺言の作成促進に期待
自筆証書遺言は簡単に作成できる、費用がかからない(保管制度を活用しても比較的安い)など「遺言者のメリットが大きい遺言書」ですが、公正証書遺言は内容が正確、無効になる可能性が少ない、相続の際に家庭裁判所の検認が不要等から「相続人のメリットが大きい遺言書」といえます。
また、手が不自由等で自筆証書遺言を作成できない人でも、公正証書遺言であれば作成できるというのも大きな違いです。
秘密証書遺言書については、どうしても相続開始まで遺言の内容を相続人や第三者に知られたくないという場合を除いては、あまり利用するメリットがないと思われます。
遺言書は作成して終わりということではありません。
相続の際にその内容が実現されてこそ意味があるのです。
公正証書遺言書は、手間や費用はかかりますが、後日に遺言の効力を覆されるおそれは減少します。確実性を重視するというのであれば、やはり公正証書遺言書の方が望ましいといえます。
改正民法において、自筆証書遺言書については、財産目録のパソコンによる記載など方式が緩和されるとともに、遺言書の紛失等の防止、遺言の真正を巡る紛争をできる限り抑止することを目的として、遺言書の保管制度が創設され、その効果として家庭裁判所による検認が不要となり、相続登記や遺産である預貯金の解約手続等の促進につながり、今後この制度の活用が大いに期待されるとことです。
・方式緩和【施行日:2019.1.13】
・保管制度【施行日:2020.7.10】
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